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YouTube チャンネルとニコ動に動画投稿する場合に知っておいたほうがいいこと

追記。2019 年3月21日現在。

あれから状況が少し変わりました。

YouTubeにアップした 以下の動画に著作権者より(動画背景に流れるラジオ音声に関して)申し立てがありました。

www.youtube.com

ニコ動と同じく、環境音や生活音と言えども、オリジナル音源と同様の扱いがされることになったようです。基本的に、著作権者より訴えがあった場合はそれにYouTube側も対処しなければならないということなので、仕方がありません。YouTubeにアップ済みの他の動画で同様にラジオ音声が入っているものもありますが、そちらに関しては著作権者からの訴えはまだありません。

これまで著作権者より訴えがあったものに関しては、いずれの場合も動画削除までにいたることはなく、申立人である著作権者に動画広告からの収益が入ることにより、コンテンツ(=ラジオから流れている曲)の使用が許可されています。

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 以下、追記を踏まえてからお読みいただくと幸いです。よろしくお願いいたします。

 

いつぐらいだったかな?動画をYouTube にあげ始めたのは。ニコ動は、そのあとか。いずれにしても、ブログの作業記事をテキトーに編集して〝電気紙芝居〟みたいなのを投稿し始めたのが、そもそもの始まりだった。

 

デフォルトのアカウントでチャンネルを作るといろいろ問題がある

YouTube で動画投稿するには、まずは、Googleのアカウントを取得しなくちゃならない。普段からGmail をメインメールにしているから、すでに持ってはいたけど、専用の垢を取得した。名前は、テキトーに「斎藤一」とかなんとかつけて登録した。そのままチャンネルの設定をすると、Googleで付けた名前が表示される…と言いたいところだが、姓名が逆に表示されたりして、よろしくなかった。国は日本で登録したんだが、なぜか名前の表示が英語圏仕様(?)になっていた。今は修正されたんじゃないかな。それ以前に、本名で登録するのはリスクがある

他のチャンネルをよく見ると、名前のところが〝〜チャンネル〟や〝〜ガレージ〟だの、好きな名前を自由に付けてるヒトがいた。それで、コチラコチラなんかを参考にさせてもらって、チャンネルを別にもう一つ作った。

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まあ…それで、俺のツイッターのフォロワーさんに言わせると、◯動画ってやつを投稿して、それなりに楽しんでた。(◯の部分は想像に任せる)

しばらくして、自分が時々拝見してた、某DIY系ユーチューバーさんのチャンネルが、突然の垢利用停止処分を受けた。チャンネル削除ではなくて、ログインができなくなり、動画の更新が全くできなくなった。規約違反もなかったし、ご本人からすれば、わけがわからない。YouTube に問い合わせてみても、利用規約を確認するようにメールで返答があるのみだった。

『へえ…そんなことがあるんだ』

他人事ながら、(動画の更新を楽しみにしていたし)気の毒に思った。(少し前に処分が解除され、現在は通常の更新ができるようになっている)

 

既存のチャンネルを新しいチャンネルへ移行

ちょうどそれぐらいの時期だったんじゃないかな。チャンネルの名前を弄っていて、全く反映されなくなったのは。たぶん、短期間に変更を繰り返したんで、設定されている上限を超えちゃったんだな。

名前の変更 - YouTube ヘルプ

『ここは一つ、垢の移行ってやつをやってみるか』

アカウントの移行とは、既存のチャンネルを新しく作ったチャンネルへ、動画や登録者ごとそっくり移動させること。名前を始め、サムネやチャンネルアートも新たに設定できる。それと、さっきの利用停止処分の話も頭の隅にあったし、アカウントの移行にはリスクヘッジの意味もある。

support.google.com

一抹の不安はあったものの、移行は問題なくできた。全ての動画と登録者、チャンネルのウラルさえも元のままなので、チャンネルを移行したことに訪問者は全く気づかない。

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 アカウント移行後に自分のコメントが表示されない

(登録者の数はさておいて)何も問題がないと思われた移行で、たった一つだけ不満がある。自分が以前に返信したコメントが表示されないのだ。おかしいのは、返信コメントは表示されないが、コメント数は正常に表示されている。

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 だから、削除したわけじゃないんだよね。(気を悪くしたヒトがいたら、申し訳ない)

 

YouTube とニコ動の著作権侵害の扱いが違う

自分のように、安い機材とソフトを使っていても、動画制作はそれなりにお金がかかる。ニコ動では、奨励プログラムというのものがあり、それに作品を登録すると、作品の人気度に応じて、奨励金が出る。自分も、『ニコ動のプレ垢料金とバイクいじりで使うケミカル代の足しぐらいになれば』とおもい、作業動画を登録することがある。

ある日、コチラの動画に対して、奨励金の付与を見送る旨のメールが、ニコ動から届いた。

 

以前に著作権侵害で一度削除処分になってからは、使用許諾曲を使うなりして対処してきた。早速に、異議申し立てのメールを送ったところ、以下のような返信があった。

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あの動画内で流れている曲は、FMの番組の音声だ。自分の解釈としては、生活音の一部として捉えていた。ニコ動からのメールには、『ニコニコポイントや金銭を分配するという観点から、このような対応をさせていただいておりますこと何卒、ご了承ください。』という一文もあった。以前に削除されたときと違い、今回の場合は動画そのものを削除されるまでには至らなかった。閲覧は今も普通にできている。

実は、ほぼ同じ内容の動画YouTube にも投稿している。

youtu.be

ニコ動と違い、YouTube の解釈では、あの動画に流れているラジオの曲は、著作権侵害に該当しない。あの動画は、YouTube では、収益化対象(=著作権侵害がないオリジナルな内容)として認められている。収益は…今のところ全く上がってないが。(閲覧数を考えれば、当然といえば当然だな)

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 YouTube にあげている、こちらの動画 ↓ に関しては、先ほどと同様に、ニコ動でも同内容のものをあげている。BGMとして使用している楽曲は、ニコ動が公認している使用許諾曲だ。

youtu.be

YouTube にあげているこの動画では、自分が収益を受け取ることはできないが、楽曲の権利所有者(申立人)に 収益が渡される形になっている。

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 また、この他にも、権利所有者がYouTube での楽曲の使用を認めているものの、一部のデバイス(=iPhone など)で使用楽曲の再生のみができない、というパターンもある。自分の場合は、こちらの動画 ↓ なんかがそうだ。

youtu.be

 

収益化は完全オリジナルの動画に限られる

ニコ動が指定する使用許諾曲以外を流している動画でも、削除されない場合もある。あれは、〝大目に見てもらっている〟とおもったほうがいい。それが証拠に、奨励プログラムに登録して収益化した途端に問答無用で削除される。ニコ動では、使用許諾楽曲を明らかにしている一方で、YouTube では、一旦動画を投稿してみないことにはわからない。既存の楽曲を使用して YouTube に動画をあげる場合は、一旦非公開で投稿しておいて、使用OKか否か確認するという手もある。ニコ動にしろ、YouTube にしろ、収益化を考えている場合は、既存の楽曲を使用しないことだ。自分の場合と違って、真剣にユーチューバーを目指しているヒトは、肝に命じておいたほうがいい。(俺のブログを覗いてくれる層には、ユーチューバーを目指しているヒトは少ないとおもうが)

ちなみに、ニコ動で奨励プログラムに作品を登録している(=収益化している)割合は、以下のような感じになっている。

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全体の作品数に比べて、すごく少ない印象を受けるかもしれないが、ニコ動の場合は、(使用許諾楽曲以外の既存曲を使用している)「歌ってみた」「踊ってみた」のカテゴリの投稿者の数が全体の割合の多くを占めている。YouTube で収益化している割合は、あまりにも分母が大き過ぎて想像もつかない。

著作権の問題を説明する際、お金の問題は抜きにして語れない。ネットでお金の話をすると、すぐに叩くヒトがいるが、自分で動画を投稿して収益化してみればいい。よほどの閲覧数がないと、お金は入ってこないことがすぐ理解できる。動画制作に労力をいくらかけたとしても、それが結果(=閲覧数)に即結びつくとは限らない。

先駆者の後追いは難しい

俺などは、バイクの作業動画…それもキャブ仕様の旧車いじりだから、閲覧する人間の種類も限られる。エンジン関連の重整備ともなれば、少ない閲覧者がさらに減る。素人がアップする動画とはいえ、参考にして作業した人間が怪我を負ったり、最悪命を落とす危険性もある。動画の冒頭で退屈な注釈を入れる代わりに、(できるかどうかは別にして)インパクトのある導入部分(=いわゆる〝掴み〟)を作れば、閲覧者は少しは増えるだろうこともわかっている。

バイクに限らず、動画投稿サイトの、どのジャンルにおいても、似通った内容の動画が今や飽和状態となりつつある。これまで閲覧者を増やしてきた投稿者でさえ、今のスタイルを続けていれば、いずれは淘汰されていくことだろう。自分が面白いとおもうことと、他人が面白いとおもうことの隔たりに常に気づいて、(編集技術や動画内の演出もすべて含めて)それを埋めていくことができる人間だけがユーチューバーとして大成していくのかもしれない。〝隔たりを埋めていく〟ということは、すなわち、他人と自分自身との妥協点を探るということなので、決して楽しいことばかりではない部分(=趣味が仕事に変わっていく)も抱えることになる。

 ユーチューバーを目指すもよし、自分のように趣味の延長で寡作ながら、コツコツと動画をあげていくもよし。できるだけ自分が楽しいほうが、やっていて長続きするということだけは言えるとおもう。

 

 

 

 

フロントキャリパーのメンテナンス

プロにキャリパーのオーバーホールを頼むと、ブラケットのボルトがガチガチに「これでもか」という感じで、きつく締められていることが多い。ちなみに、1100のカタナでも、ブラケットのボルトの締め付けトルクは38N·mだ。 

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自分が実際にキャリパーをブラケット(キャリサポ)から外すときは、ソケットをつけたT型のハンドルを使う。上の画像のような道具の使い方は通常ではないし、何より道具自体が痛むから、緊急時以外はやりたくはない。どうしても外れない場合や道具がないときの対処に限られる。(画像よりも六角の根元付近までメガネを通して回すほうが、六角にねじれが起きにくいとおもう)

 

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昔、新車で買ったゼファー750のフロントキャリパーに引きずりが起きたことがあった。2枚のディスクの外周表側には、明らかに変なアタリができていて、購入当初から何キロ走ろうが、その跡がディスクから消えない。走行中に〝サー〟という音はする*1ものの、運転には支障がなかった。しかし、そのまま走り続けるにはもちろん不安がある。試しに、ブラケットを留めているボルトを一本外すと、〝コロン〟って感じで、ワッシャーが一枚床に落ちた。確認すると、ワッシャーは4本のボルト全部に付いていた。そのワッシャーの厚みだけ偏りが出て、引きずりが起きているだろうことは予想がついたが、ボルトを元どおりに締めて、(ワッシャーの件は告げずに)バイク店へ連絡して取りに来てもらった。数日して、バイクは修理を終えて戻って来た。

 

『点検したので、大丈夫だろうと思います。こういうことは、たまにありますが問題ありません。故障や不具合ということではないです。おっしゃっているディスクに付いている跡は、走っているうちに消えていきます』

 

バイク店の整備主任は、手短に修理内容を自分に説明すると、帰って行った。

 

その直後、倉庫で再度ゼファーのブラケットのボルトを外すと、あったはずのワッシャーは4枚とも消えていた。

後日、ゼファーの慣らしが終わって、オイル交換にバイク店に行った。その際に、ブラケットのボルトを自分で外して、ワッシャーを見つけたこともバイク店に伝えた。だが、バイク店の返事は、『ワッシャー?そんなものありませんでしたよ』というものだった。

そこそこに長い自分の車歴の中でも、ブラケットのボルトにワッシャーが付いていたことはない。ゼファーのパーツリストを念のため確認したが、やはりワッシャーは無かった。新車には違いないようだったが、今もってワッシャーがなぜ付いていたかは謎だ。(純正のキャリパーを装着していて、ワッシャーをセンター出しのシムの代わりに使うことも考えられない)ゼファーのフロントディスクについていた跡は、バイク店が説明した通りに、しばらく走っているうちに消えた。

 

 

 

 

 

キャリパーのメンテに話を戻します。

 

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キャリパーをブラケットから外したあと、ブレーキホースにテンションがかかるのを防ぐために、S字フックで吊る方法も昔に試したことはある。試した結果からいうと、細かい部分を洗う際には最終的にS字フックからキャリパーを外さないとやりにくいし、作業効率がお世辞にもいいとは言えない。

自分の場合は、画像のようにクルマを洗うときのバケツの上にステンレンスのトレイを置いて、そこにキャリパーを置いて洗浄する。キャリパーを〝点〟で吊るよりも、〝面〟に置くほうが安定するし、途中で作業を中断したい場合も簡単に行える。

キャリパーを丸洗いする際は、昔のTV通販でお馴染みだったシンプルグリーン(希釈タイプ)を使う。作業後に残った水気はコンプレッサーのエアーで吹き飛ばしてウェスで軽く拭き取ってしまうだけでいいから、屋内で全ての作業を完結させることができる。定番の台所用洗剤は、久しく使っていない。泡切れが悪いから、そのために水が多く必要になる。必然的に屋外での作業を強いられ、まだまだ寒いこの時季はつらい。

 

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 パッドの厚みは十分にあり、片減りもなし。パッドスプリングとパッドピンは洗浄して再使用。

 

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 キャリパーは、洗浄したあとにエアーで水気を十分に飛ばし、最後に軽くウェスで拭き取る。ブレーキレバーを握って、ピストンの頭を少し出し、側面に耐熱のシリコングリスを塗り込み、スムースに動くか指で押して確認する。*2 ピストンのパッドの当たり面には、〝鳴き止め〟にカッパーグリスを薄く塗布しておく。

 

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キャリパー本体をキャリサポにボルトで仮止め。パッドをセットしたら、パッドスプリングで押さえ、耐熱のシリコングリスを塗布したパッドピンを挿し込む。パッドピンは、脱落防止のベータピン(4パイ)で忘れずに留めておく。

 

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 仮止めのキャリサポのボルトを、トルクレンチで本締め。

 

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 今回の締め付けトルク値は、38N·mで。

 

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 最後にブレーキレバーの感触が固くなるまで数回握り込んで、作業は完了。

 

ブレーキキャリパーを含む制動装置は重要な部品です。当記事を参考にされて同様の作業を行い、もし不具合や事故が起きた場合、当方は一切の責任を負うものではありません。作業に自信がない場合は、プロに任せることを強くお勧めします。

 

youtu.be

 

 

*1:運転者本人には聞こえるが、歩行者や周囲には聞こえない。

*2:ある程度の力が必要。今回は、ディスクブレーキセパレーターは使用しなかった。

BARNSTORM TROOPS MC G-VEST

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昨年の秋頃に注文して、届いたのが年明けもずいぶんすぎた頃だったGベスト。値段が値段だし、着る人間も限られるということで、次回生産は未定。バトルスーツの上から羽織ることを計算してか、(バイク乗りの使い勝手を考えた)丈は短め。

 

とことん着古したG-VESTの看板(=ワッペン刺繍部分)は、切り取って、次のG-VESTに縫い付けて使うのが流儀とか。そういえば、看板の周りの毛羽立ち*1が、年月を経た風格を漂わせているベテランライダーを時々お見かけします。

 

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*1:G-VESTの生地ごと切り取るため。

一年前の俺。

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はてなブログから、こんなメールが届いた。ここでブログを書き始めてから四年目だけど。こんなの届いたのは初めてだ。一年前に俺が書いた記事を、頼みもしねえのに羅列してくれてる。以下、その過去記事たち。

 

ghost-pain.hatenablog.com

これって、歳を追うごとに切実になってくるわな。特に俺の場合は。

 

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今年は、まだ梅は満開だ。

 

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この後しばらくして喫煙者にまた戻っちまったからな。人間なんて先のことはわからねえもんだな。13年前にやめたときのセブンスターの価格は260円。200円も値上がりした。(リンク切れは申し訳ない)

 

ghost-pain.hatenablog.com

〝おねえさん〟じゃなくて、〝おねいさん〟なのは、俺がクレヨンしんちゃん好きだから。

 

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キャブに限らず、中古部品を入手するとき全般に言えることだとおもうよ。

 

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顎髭の有る無しで、自分を見る他人の印象が違う。俺の場合は、目立つ傷を隠す意味もあるもんで、剃ってれば剃ってるで、人によっては奇異な目で見られることもある。

 

 

 

ブログの再開以来、スターも利用することはないし、コメント欄も閉じている。はてな経由での閲覧も減ったというか、ほとんどない。いや、全くないと言っていい。はてなでブログ書いてるっていう帰属意識も、いつの間にやら無くなってしまった。しかし、ページビューが、だだ下がりなのかというと、そうでもない。おかげさまで、バイク関連記事の検索流入からの閲覧が結構あるからだ。まあ……〝結構〟とは言っても、高が知れてるがな。

 

今の更新の形が、自分的には楽だし。(バイクに限らず)興味のあること以外は、これからも、ここで書くことはないだろうね。はてなスターや被ブクマの数が、あんまり意味がないことも、先の封印をしたおかげで、図らずもわかってしまったし。〝はてな村〟って言われる所以を、四年目にして、ようやく理解した感じだ。*1

 

 

 

*1:あくまで、俺個人の感想です。

弟に父の死を知らせるタイミングを妹や母と相談した結果、葬儀*1を終えてからということになった。自分が弟を迎えに行く旨を、前もって施設へ電話を入れた際、『父の死については家族から本人に直接告げたいと思います。(外泊で家に連れて帰る理由について尋ねられた際は)「家の用事」ということにしておいてください』と、職員に念を押しておいた。

 

 

 

施設から家に到着して間も無く、弟は母から父の死を告げられた。というよりも、自分がトイレに行っている隙に、母に先を越されたというのが本当のところだ。弟の反応は、至極あっさりとしたものだった。取り乱したり、家族を責めることもなく、父の遺影の前で静かに手を合わせていた。

 

家族で昼食をとったあと、弟と二人で役所へ向かった。父の死後の手続きに関連して、弟の実印を印鑑登録する必要があったからだ。 印鑑登録に際して、顔写真付きの証明書が必要だが、弟は保険証しか持っていない。兄の自分が身分保証することで、それが可能になる。自分の〝印鑑登録カード〟を差し出したが、受け取る職員の態度がいつになく事務的で冷たい感じがした。職員が、しきりに弟の様子を伺いみるのも気になった。

 

(…お袋の誕生日。何年だ? 78って言ってたが、あれは数えで言ってたのかもしれんな。今日は、俺と弟の証明書だけにして、お袋のは月曜にもらうことにするか)

 

『親兄弟の誕生日もろくに覚えてないのか?』とでも言いたげな様子の職員の刺すような視線に自分が耐えている最中、弟が不意に口を開いた。

 

『お兄さん。大丈夫ですか?』*2

 

どうやら、彼なりに察したらしい。自分は、

 

『うん。大丈夫やで』

 

と努めて平静を装った。嫌な汗が自分の背中を伝うのを感じた。その夜、妹と電話で話した際、妹が家族全員の誕生日を覚えていたのには驚いた。言い訳になるが、うちは、他家のように家族の誕生日を祝う習慣自体がなかった。母は、(舅だった)祖父の命日に必ず線香を立てる*3が、自分の誕生日が過ぎても口にすることはない。うちのような家は、世間では少数派ということになるらしい。

 

 

 

 

弟が施設へ戻る日。

 

弟に新しい靴を買って店を出たあと、『本屋へ行きたい』と言うので、少し遠い本屋へ連れて行った。弟の記憶にある地元の本屋2軒のうちの1軒はすでに潰れ、残りの1軒は彼の欲求を満たすほどの種類の書籍を置いていない。

 

行きつけの本屋は、自分がかつて暮らしていた街にあり、自宅からクルマで小一時間ほどの距離だ。本屋に着くと駐車場はほぼ満杯だったが、運よく一台のクルマが出るところだった。入れ替わりに停めて、二人で店に入った。

 

父の状態が、ここ2年ほどで悪くなってからは、そこの本屋からは自然と足が遠退いていた。しばらく行かなくなった間に店は改装をしたらしく、コーヒーを頼むカウンターが新しく設置された店内は、週末ということもあって賑わっていた。

 

弟は文芸書のコーナーで単行本を一冊選び、支払いを済ませると早々に二人で店を出た。客も含めて店内の程よい無関心さが心地よく、(弟の外泊の時間に余裕があれば)もう少し長居してもよかったぐらいだ。

 

(都会はいい。適当に放っておいてくれる)

 

駐車場へ向かう途中、思わず独り言が口をついて出た。

 

 

 

 

*1:身内だけの家族葬で済ませた。

*2:弟が自分や家族に敬語で話す理由はよく分からない。もしかしたら、彼の中でそれが『大人というものだ』という認識になっているのかもしれない。

*3:月命日を含む。