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アルミ製サイレンサーの鑞(ろう)付けによる補修

コチラで書いたように、サイレンサーの分解が終わったので、傷の補修をする。

 

f:id:ghost_pain:20161205204016p:plainサイレンサーの裏側に出来た傷というのはこの赤い丸で囲んだ部分。リアのアクスルシャフトの先で擦って出来た傷だ。(アクスルは、左右をコチラで入れ替えたので、今後同じ場所に傷が入ることはない)

『何も、分解しなくてもサイレンサーの傷の補修なんてできるだろ?』

という疑問は当然だと思う。だいたい、この手の傷を修理する場合は、ホムセンか四輪の用品店でアルミパテを買ってやっつけることになることが多い。経験した人間なら分かるとおもうが、アルミパテで仕上げるとパテと地のアルミとの境目がくっきりと分かるし、『ここですよ。パテで補修したところは』という感じの残念な仕上がりになる。たとえ磨いたとしても、パテとアルミそのものでは質感が全く違うので、ホイールなどの補修後は塗装で仕上げることが多い。

いくら裏側の見えにくい部分とはいえ、できたらそういう不細工なことは避けたい。サイレンサーの材質がアルミということもあり、今回は鑞(ろう)付けで傷を補修することにした。鑞付けで補修するとなると、補修箇所を高温で加熱することになる。分解せずに加熱した場合は、中のグラスウールを焼くことになるし、どちらにしてもサイレンサーを分解することになるというわけだ。普通は、サイレンサーの分解なんてのは、グラスウールを交換するときぐらいしかやらない。

鑞付けを簡単に説明すると、半田付けの親戚というとわかりやすいかとおもう。(例えば穴の空いた燃料タンクなどの)母材を半田ごての代わりにバーナーなどで加熱して、そこへ半田の代わりに「硬ろう」を補修したい穴や傷に流し込む、という具合。通常、アルミの鑞付けはフラックスを使う。しかし、フラックスを使う鑞付けは、ある程度技術的に習熟しないと難しい。それで、今回はフラックスを必要としない鑞付け棒(=アルミ硬ろう)を使うことにした。

f:id:ghost_pain:20170114122927j:plainそれが、この鑞付け棒。アマゾンで検索すると、フラックスを使わないタイプのアルミ硬ろうは、1社からしか出てないから、すぐ見つかるとおもう。あとは加熱に必要な道具のバーナーを揃えるだけだ。

f:id:ghost_pain:20170114124716j:plain今回使用したバーナーはカセット式のもので、どこのホムセンでも入手可能なものだ。

f:id:ghost_pain:20170114132158j:plainまずは、下準備として傷の部分及び周囲をワイヤーブラシで荒らす。そして、前述した手順で鑞付けを行う。フラックスは使わないので、取説に書いてある温度に補修箇所を十分に加熱できたら、そこへ鑞付け棒を接触させて溶かし、流し込む。母材(=サイレンサー)を十分に加熱することが作業が上手くいくコツだ。

 

実際の鑞付け作業は、また動画でアップするとして……いきなりだが、

 

f:id:ghost_pain:20170114132704j:plainサイレンサーの傷を鑞付けで補修するとこんな感じになる。画像の補修した部分は、グラインダーで均したあとに軽くペーパがけしてある。鑞付けのあとの肉盛りされた部分は、磨いて薄くしすぎると剥がれやすくなるから、この程度の処理にとどめておいた。そこはやはり、硬ろうを流し込むだけの鑞付けよりも(部材同士を溶かして接合する)溶接のほうが強度的には上だから、用心するに越したことはない。

f:id:ghost_pain:20170114134124j:plain同じ補修箇所を、さらにメタコンで磨き込んだ。蛍光灯の明かりが、わずかに歪んでいる部分が鑞付けした箇所だ。

f:id:ghost_pain:20170114134338j:plainもう少し近づいて見る。アルミパテより鑞付けのほうが、地のアルミとの見た目の馴染みが良いことは言うまでもない。それに、

f:id:ghost_pain:20170114134607j:plain耐久性については、取り付けてしばらく時間を置かないとわからないが、鑞付け後はハンマーで叩いても簡単に剥離する様子もなくガッチリくっついていた。

f:id:ghost_pain:20170114140239j:plain他にもマフラーエンドの縁の傷や、

f:id:ghost_pain:20170114161942j:plainリベットを揉む際に、うっかりドリルが滑ってずれた穴*1の修整も、鑞付けすると簡単に修整できた。

f:id:ghost_pain:20170114162047j:plain(そんなに強度が必要でない部分なら)手軽に補修ができるので、アルミの鑞付けの使い途は結構あるとおもう。

f:id:ghost_pain:20170114164510j:plain作業場所にもよるだろうが、鑞付けを行う場合は、画像のような耐熱の不織布(=溶接用) を下に敷くなどして養生したほうがいい。ちなみにバーナーで母材のアルミを加熱する場合の温度は、取説によると390℃(=アルミ硬ろうの融点)と書いてあった。また、鑞付け後は自然冷却するよう書いてあり、それに従った。それから、アルミは他の金属に比べて熱伝導率が高いので、鑞付け後に自然冷却する際も置く場所には十分気をつけたい。鑞付けした直後のものが、例えばドライバーの樹脂製の柄などに触れると簡単に熱で柄が溶けてしまう。

 

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*1:リベットをドリルで揉む際に、後半へ行くほど穴とマフラーエンドの位置がずれてくることがある。揉む際にリベットが完全に下へ落ちないように気をつけてはいたが、最後の穴の一つがズレてしまった。