人間の中身が変わるわけじゃない
週末の道の駅。
ロータリーの内周に沿うような形で、何台ものバイクが並ぶ。
バイク雑誌などのメディアを中心として、マナーの向上を呼びかけるようになったことも関係しているのか、いつのまにか、こうした風景が定着するようになった。
こういう形が、一般人から見て、本当にマナーがいいバイク乗りの形かどうかはわからない。施設内の歩道に接するようにして隙間なくバイクが並べられている光景は、バイク乗りが眺める分には圧巻だが、(一部のバイク好きは別にして)観光客のほとんどは近寄って来ようともしない。
日帰りツーリングの帰り。
たまにしか寄らない喫茶店の前には、何十台ものバイクが整然と路肩に並べられていた。自分が寄るのと入れ違いのようにして、エキゾーストノートを周囲に轟かすと、あっという間に店を出ていった。
『バイクって危ないですよね』
女性のオーナーは、水を運んでくれたあとに、そう言って、俺に話しかけてきた。彼女は、当然、俺がバイク乗りであることも知っていた。話を聞くうちに、さっきの入れ違いに出て行ったマスツーリングのバイク乗り達に怒っているらしいことがわかった。
店にいた彼らの態度にどんな問題があったのか、自分はその場にいなかったし、同じバイク乗りだからという理由で(?)不満をぶつけられても、こちらとしては返答のしようもなかった。バイクを停めていた様子からしても、店の正面を避けて、クルマで入ってくるお客が困らないように対処していたようだし、そんなにマナーが良くない連中にもおもえなかった。
休憩を終えて、店の外へ出た。帰りの身支度を整えながら、店舗の周りをあらためて眺めてみた。(アスファルトの広い路肩を越えてすぐの)店の駐車場すべてに砂利が敷き詰められているのは、何もコストを考えてばかりのことではないらしい。
『ここへおまえらは来るな』
そう言われている気がした。それ以来、その店に立ち寄ることは無くなった。
ずいぶん昔のこと。
バイクで寄ったときにあからさまに不機嫌な対応をされたから、(よせばいいのに)次はクルマで訪れてみると、(それこそ掌を返したように)相好を崩して揉み手してくるような店も、実際にあった。自分はライディングジャケットをフード付きのパーカーに着替えただけだ。人間の中身が変わったわけじゃない。
四輪の駐車区画の縦方向に対して、直角になるように大型のバイクを停めている人間がたまにいる。“俺の隣に停められるものなら停めてみろ” とでも言いたげに。いい歳して、(喧嘩上等とか)ああいうことはやめたほうがいい。第一、本当に両隣にクルマが停まってバイクが出せなくなっても、誰もそんな奴の味方をする人間はいない。一度トラブルにでもなれば、施設側が通報して万事休すだ。警察に事情を訊かれている格好悪いところを、写メにでも撮られて、ネットに……とにかく悪いことは言わないから、あんなことはやめたほうがいい。