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峠を越えようとしたら、予想外の積雪でスタックしたときの話。

20年ぐらい前だったとおもう。

兵庫県丹波市側から朝来市を抜ける際に通る、青垣峠(生野峠)。時季は3月ぐらいで、銀山湖へ出ようとクルマで走っていた。行けば分かるが、良くて一車線半ぐらいの幅しかない。舗装はしてあるが、近年は〝酷道〟の1つにも挙げられていて、用事がなければ、まず普通は誰も通らない。

クネクネと曲がりくねった細い道の両側には、杉が植林されている。丹波市側から入ると、途中から左側は完全に崖になり、転落を防止するガードレールはなく、上りの勾配はかなりきつい。まだ寒い時季だったが、数日前に降った雪も消えていたので、『大丈夫だろう』と高(たか)を括っていた。これが甘かった。

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生野峠 - Wikipedia

あと少しで峠を越えるというところで、うっすらと雪が積もっていた。これが平坦な場所だったら、さっさと引き返すところだったろうが、そうなると、延々とバックで後退することになる。あそこの場所を走った人間なら分かるとおもうが、とてもじゃないが、そんなことはできない。対向車を避けられる道幅のところまで下がるには、距離がありすぎる。

『ええい!ままよ。行ってしまえ!』

今から思えば本当にバカをやったもんだが。前輪が雪に乗ったとおもうと、すぐにズルズルと滑り始めた。アクセルを踏み込むと、タイヤは空転して、車体が左右に振れる。

『終わったな』

最初に見たときは、うっすら積もっていたと思っていた雪も、運転席から降りて確認すると、坂を上りきる手前ぐらいで5センチもあった。ノーマルのタイヤを履いたクルマを立ち往生させるには十分だ。すでに、後輪も雪のエリアに入っている。後退することもできない。

急勾配のせいで、朝来市側から来る車両には、こちら側は見えにくい。走行しているクルマ同士が行き交う分には、音で判断して譲り合うこともできる。しかし、こんな中途半端な坂の途中で停まっていることなど、相手側からすれば、予想だにしていないことだろう。

今から思えば、アスファルト舗装なのだから、前輪の周囲から進行方向の雪を除去すれば、そう時間もかからずに脱出できただろう。しかし、実際に、あのような場所で窮地に追い込まれると、普段の冷静さはどこかへ飛んで行ってしまう。それでも、考えているうちに、1つの方法が頭に浮かんだ。

『一か八か…あの方法を試してみるか』

まずは、足元の雪に注意しながらクルマから降り、工具箱やら何やら、あるだけの荷物をトランクから下ろして、それをボンネットの上に積んだ。そして、運転席に戻り、慎重にアクセルを踏み込んだ。前輪に適度に負荷が掛かったクルマは、ジリジリと坂を上り始めた。*1

 

結局、雪が残っていたのは、丹波市側だけだった。朝来市側へ出てみると、路肩には雪がところどころ残っていたものの、走行には全く支障がなかった。

『…助かったあ』

ようやく、峠を越えることが出来、思わず俺は安堵のため息をついた。あれから、あの周辺を走る機会は殆どないが、今はどんな感じだろうかねえ。

 

国道429号 - Wikipedia

 

touge1000.com

*1:当時、自分が運転していたクルマは前輪駆動です。