何時間かけてもキャブの同調作業が全く終わらない原因とは?
タイトルの終わらない。というのは、同調が全く取れないという意味です。
結論から言うとですね。バキュームゲージの針をピタッと静止した状態で同調を取るとツボにハマる。ということなんですよね。
『そんなこと知ってるよ』
ええ。自分で整備をする、大半のヒトはご存知なんですけど。自分が巡回してみた範囲では、動画やブログ含めて、実際にはそのことにほとんどというか全く触れていないことが多いようです。
画像は、キャブレターの負圧の取り口*1につなぎ、エンジンをかけ、バキュームゲージ(以下、ゲージと省略)の針は、全く振れないところまでローレットを回して静止した状態です。これを見る限り、ほぼ針が揃い、マニュアルの数値的な誤差の範囲内と言えます。
しかし、この状態からスロットルを煽ると、
わかりますかね?とは言っても、分かりにくいので、前の画像と重ねてみます。
ゲージに向かって右側(下側)の針が、静止した状態。同じく、左側(上側)の針がスロットルを煽った状態です。
注目してほしいのが、静止した状態で1番と2番がほぼ同じ針の位置を指し示し、同様に3番と4番が同じということです。本来なら、この状態から真ん中の2番と3番を調整して、四気筒全ての同調が完了するという流れです。しかし、スロットルを煽ると、静止した状態で同調が揃っていた隣同士でこんな感じでズレてしまっています。
(もちろん、ゲージやキャブ本体の作りなど他の原因も、わずかに影響しているとは言えなくもないのですが)問題は、ゲージの針を止める際、無意識に『ここで揃えたい』という願望が加味されているかもしれない、ということです。結果、自分自身が気がつかないうちに、それぞれのゲージのローレットをわずかに締め込んでいることもあれば、逆に緩めていることもあるということです。
こういう状態で最終的に針の位置が揃えばいいですが、最悪の場合、いくら時間をかけても同調が全く合わないという、負のスパイラルに入ってしまいます。(燃料も無駄に消費することになります)
そして、運よく同調が取れたとしても、見た目にゲージの針の位置が合っているというだけで、実質的には正確な同調が取れていない、という結果に繋がります。
じゃあ、どうすればいいのか?それは、ゲージの針はわずかに振れた状態かつ振れ幅を一定に揃える。それから調整に入る、ということです。これならば、例の〝願望〟の要素は排除できます。あとは、キャブの調整ネジをドライバーで回す際には、本当に少しずつやる…ですかね。(調整前に暖機を十分にしてください)
あくまで私見ですが、キャブ同調のやり方のコツを以下にまとめました。
【まとめ】
- 調整前の暖気は十分にとる。*2
- (屋内で作業する場合は)換気に十分に気を配る。
- 同じく、(オーバーヒートを防ぐため)工業扇などでエンジンの温度が必要以上に上昇しないようにする。
- 燃料は多めにサブタンクに入れておく。
- ゲージのローレットは、エンジンをかけてからゆっくり緩める。*3
- ゲージの針は完全に止めず、わずかに振れた状態で揃える。
- 作業中のキャブ側の調整ネジは、ゲージの針の動きを注視しながら本当にゆっくりと少しずつ回す。
- サービスマニュアルに記載の誤差の範囲内に収まれば、(完全に揃わなくても)それ以上の深追いはしない。
調整するたびに、(ゲージの針を安定させる目的?で)スロットルを勢いよく煽る方もいますが、あの行為自体、無用にバキュームゲージを痛めることに繋がりますので、個人的にはあまりお勧めしません。(作業を見ると、大抵の場合、ゲージの針をピッタリと静止した状態で調整されています)
だいぶ前に投稿したものですが、自分の動画を貼っておきます。(ゲージの針を調整する際の振れ幅など)作業の際に注意するポイントなどがご理解いただけると思います。(動画は投稿初期のものです。多少、字幕が見にくいのはご容赦ください)
冬のメンテナンス
自分の場合、中古パーツを取り寄せたら、使用前に全て分解して点検・清掃するようにしています。
シリンダーの縁(ふち)に、〝虫食い〟があったりします。動作確認を店側でやっていたとしても、中古パーツを取り寄せた場合は鵜呑みにしないことだと思います。特にこういう重要部品は。
キャブレターは、普段のメンテの際にも中途半端に開けることをしないで、やるときは完全分解したほうがいいです。分解清掃後に、それまで悪さをせずにキャブ内部に付着していたゴミがジェットや燃料経路に詰まる可能性があるからです。Oリングの類は、パイロットスクリューの小さなものまで全て交換。フロートバルブも、段付きがあるなら即交換です。
自分は、あまりにも固着などが酷い場合は、画像の鍋に薬液を投入して、キャブ本体を文字どおりに〝煮る〟こともあります。そして、組み立ての前には念入りに燃料経路にエアーを通します。やはり、こういう整備にはコンプレッサーは必需品と言えます。
そうそう。オフシーズンに点検したほうがいい箇所として、カムチェーンテンショナーがありますね。カタナは、ここからオイル漏れすることがしばしばあります。
そんなに作業の難易度としては高くないので、クランクケースの上が常時オイルで汚れる場合は、分解してシールを交換しておいたほうがいいですね。
自分がチェーン交換をする場合、外す際に専用工具は使いません。チェーンカッターのピンは、気をつけていても簡単に折れてしまいますから。一見して乱暴なようですけれど、手っ取り早くディスクグラインダーでカットしてしまいます。専用工具は、最後にかしめる時にだけ使います。かしめ過ぎには、くれぐれも注意です。加減がわからない場合は、プロに頼まれることをお勧めします。
今日ポチりました。
また、そのうちに動画でお披露目します。
万物流転
『おい。使い捨てライターってのは、使い切れるから、使い捨てライターじゃねえのか?まだこんなにガスが余ってるのに、もう火が着かねえよ』
『相変わらず理屈っぽいね、お前は(笑)…貸してみろ』
そう言って、奴は俺からライターを取り上げると、両掌(りょうてのひら)に挟んでこすり始めた。
『気温が下がってくると、ガス化しにくいからな。こうやって暖めてやると…ほら、点いた』
それにしても、この時節の倉庫の中は寒い。コンクリートの床は、しんしんと冷えるし、鉄骨を覆うスレートの隙間からは風が入ってくる。バイクを置いていなければ、いい年をした大人が、何を好き好んでこんな場所に長居などするものか。
俺は、ようやくタバコに火をつけ、人心地着くと、また一人でに愚痴をこぼしていた。
『昔の使い捨てのライターなんか、何もしなくても最後まで火がついたもんだぜ。それがどうだよ。俺が禁煙してる間に、100円ライター自体がなくなっちまったし。(タバコの値上げに合わせた)便乗値上げはいいが、使えるものを売って欲しいもんだわなあ。全く』
〝また始まったよ。こいつ〟とでも言いたげに、ニヤニヤしながら、奴は黙って俺の話を聞いている。
『ところでよ。あそこの、崖に行く手前のコンビニ。潰れちまってたわ』
『へえ?あそこがね…いつよ?潰れたの』
『先週の土曜な。久しぶりに行ってみたら、看板も何も外してな。完全に閉めてたわ』
俺たちが、〝崖〟と呼んでいるのは、海沿いの、幾重にも小さなカーブが続くワインディングのことで、コンビニは、ちょうどその崖の道へ入る手前にあった。
崖を走る前に、俺たちが決まって休憩を取るのが、その店だった。
『案外な。フランチャイズ変えて、しばらくすると、またやり始めたりするんじゃねえの?そういうとこ、最近多いぜ』
奴は、〝馴染みの場所がなくなったことなど、少しも意に介してない〟とでもいった風で、淡々としたものだった。
『それによ。あそこは、海水浴場の真ん前だし。冬は冬で、カニを食いに来る観光客乗せたバスも立ち寄るし。そう心配したもんでもねえと思うぜ』
奴はそう言うと、タバコの煙を、ふうっと勢いよく吐き出した。
栄枯盛衰、生者必滅。万物流転は世の習い。自分のバイクにしたところで、キャブを変え、足回りを変え、…元の姿に戻ることはない。俺自身が年をとるのに合わせて、俺のバイクも姿形を変えていく。永遠に変わらぬものなど、どこを探してもありはしない。
『本当に…世の中は万物流転の如しだな』
『万物流転?はは。〝ローリングストーン〟ってやつだな(笑)』*1
*1:彼個人の解釈です。