ナイトメア・ビフォー・ハイシーズン (2)
府道1号線の山中は、この時季は夕方に冷え込む。
福井県側のおおい町に入った辺りは、峠道がしばらく続く。
用を足そうにも、一番近い道の駅は、峠を過ぎて、川沿いをずっと行った先だ。
自分の背後で『ガタン』と音がしたとき、一瞬で事態は飲み込めた。
(あれほど催していた尿意も一瞬で引っ込んだ)
ジーンズのジッパーを上げて、バイクのそばに這いつくばるように身を低くして…車体を引き起こす。
少し傾斜した路面は甘く掛かったサイドスタンドを拒絶したが、逆に重い車体を引き起こす手助けをしてくれた。
車体の下にはオイルが漏れていた。
とにかく、この場所ではまた同じことが起きる可能性があるので、なるべく平らな場所へバイクを移動させて、詳しい状態を確認せねば。
オイル漏れは、おそらくオルタネーターのカバーの隙間からだろう。
傷は、磨けばなんとかなりそうだな。
エンブレムは輸出用だが、家に予備がある。
これも磨けば。
これは…たしか、中古だがパーツのストックがあったかな。フロントとリアは微妙に仕様が違うから、帰ってストック分を確認だな。
さて、と。
典型的な壊れ方だな。
これがあるから、昔はフォルクスワーゲンのウィンカー付けたりしてたんだな。
(前面投影面積が問題で)車検は通らないから、結局意味ないけど。
レバーは交換だな。
ちょい歪んでるし。
バーエンドも交換、と。
ここだけ部品出せ、って言っても無理だろうな。
オオノスピードは、レバーしか消耗部品を出してないから。
磨くしかしょうがないだろ。
根元に近い部分から歪んでるな。
ねじ込み部分がイってるか?
クランプは最悪交換だな。
さて。
この山中からどうやって脱出するかな。
さっき確認したら圏外だし、電波入る場所まで移動だけど。
オイル漏れがそこまでもつかな。
福井県側で積載なんてことになると、輸送費がとんでもないことになりそうだから、当然戻るしか選択肢はないんだけど…。
このあと、ほんのしばらくの間悩んだあと、エンジンをかけて綾部側へ移動。
県境の標識の平らな場所でオイル漏れの状態を確認すると、奇跡的に収まってくれていたので、あまり開けないようにして…気がつくと自宅まで帰り着くことができてました。
つづく。