バイク店から電話?
朝。
枕元で、ケータイの呼び出し音がずっと鳴っている。
『うるせーよ。土曜の朝から誰だよ?俺はぜってー出ねーぞ……』
再び俺が微睡んでいるうちに、呼び出し音は止まった。
しばらくして、暑さと尿意で目が覚めた俺は、手探りで枕元のケータイのホームボタンを押して、画面を確認した。
『おかしいな…?』
あれほど呼び出しが続いていた割には、留守電にメッセージもない。
仕方がないので、今度は履歴を確認する。
『ん?バイク屋?』
例のバイク店のオーナーの個人のケータイからの発信履歴が一番上にあった。
それよりも問題なのは、その1分前の履歴をみると、俺から相手のケータイにかけていることだ。
たぶん、寝返り打ったか何かの拍子に、すぐそばにあったケータイの画面に俺が触ったんだろう。
履歴か電話帳かが開いて、そこから発信して、発信直後にまた画面に触れて切って……ということらしい。
通常なら、相手に詫びの連絡を入れるところだが、いまの関係からは、俺がそれをすることは考えられない。
昔、妹にこれとおなじことを逆に俺がやられたことがあった。
そのときは、どういうわけか、外階段か何かを昇り降りする「カンカン」という足音が、留守電に延々と入っていた。