紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ

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転職して一ヶ月が過ぎた。

水虫を治す特効薬を発明したらノーベル賞が獲れると、かつては言われたが、今は市販の薬を根気よく塗り続けていれば完治する。*1ただし、本当にそれが水虫だった場合だが。足が痒いからと言って、水虫とは限らない。病院へ行き、皮膚科で診察してもらい、医師から『これは水虫ですね』と言われて初めて『自分は水虫を患った』ということになる。皮膚に痒みを生じる水虫に似た症状を呈する病気は複数存在する。水虫でもないのに、水虫の薬を付けても治ることはない。逆に症状を悪化させるだけで、お金も時間も無駄にする。この場合のアドバイスをもう一度整理して言うと、『足の痒みが治まらないの?もし水虫だったら市販の塗り薬でも治るよ。こういう病気で通院は恥ずかしいというのもわかるけど、でも必ず一度は病院の皮膚科で診てもらってね。それで本当に水虫だったら、市販の薬を買って自分で治したらいいよ。ただし、症状が少し和らいだからといって途中でやめたらダメだよ。治るまで根気よく続けないと』ということになる。

〝風邪かな?と思ったら、◯◯◯(=商品名)〟

人間という生き物は、つくづく自分の都合のいいように物事を解釈するものだと思わされることがある。熱が出て咳が止まらないから『風邪を引いた』と単純に思い込む。病院で診察してもらって初めて『インフルに罹ってた!』と驚く人間が毎年のように後を絶たない。(CMという性質上、消費行動を喚起するのが第一の目的ということは理解できるが)そういう俺自身も、最近『アレは少しマズかったな』と思う発言をプライベートでやらかしてしまった。

 『二輪に限って言うと、ディスクブレーキよりもドラム(ブレーキ)のほうが、メンテナンスは簡単ですよ。だけど、性能は…』

もうそこからあとに俺が言おうとしたことを相手は聞いていなかった。おそらく、メンテナンスが簡単=総合的な性能がディスクよりも上という勘違いをさせてしまったに違いない。

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俺は髪を切ってもらいながら、その後も何度となく『あくまでメンテナンスに限った話ですよ。だけど…』と店主に説明を試みたのだが、『へえ、ドラムブレーキがねえ』と、彼は宙を見つめてそれきり耳を貸さなかった。ああいう場所の特徴として、何気なく迂闊に話したことが、(聞く側の勝手な解釈が付け加えられた上で)『(うちのお客さんで)専門に仕事されている方が言ってましたよ』と、不特定多数の人間に伝播される羽目になる。

例えば、カブなどのブレーキシューに関しては、シューとスプリングが最初から一体に組まれた部品が、純正や社外に関わらず供給されている。そのままの形でドラム内に組み込めば、(もちろん交換後のレバーやペダルの調整は必要だが)ブレーキ自体のオーバーホールは完了してしまう。対して、ディスクブレーキをオーバーホールする場合、消耗部品の交換だけでも、パッド・フリュード(ブレーキ液)・ピストン&ダストシールなどと多岐に渡る。これにマスターシリンダー部分が加われば、さらに交換する箇所は増える。これらの消耗部品の交換後、当然のごとく面倒な(?)エア抜き作業も控えている。

『そうかなあ?カブのリアのブレーキシュー交換だけど、ホイールを外す結構大掛かりな作業になるよね?あとでチェーン調整もやらなきゃダメじゃん。面倒じゃね?』

その通り。『メンテナンスが簡単』とは言っても、それは分解組立に習熟した者が完全オーバーホールをする場合に限った話だ。カブのフロントのブレーキシューの交換にしても、ホイールをフォークから一旦外さなくては、ブレーキシュー自体を取り出すことが出来ない。そして、あとで『メーターが動かない!』と慌てないよう、ハブの中にあるメーターギアがキチンと作動するように注意して元に戻さないといけない。(ブレーキシューとブレーキパッドの交換自体に限って作業のし易さを比べた場合は、ディスクブレーキに軍配が上がると個人的には考えるが、これも作業する者によっては一概に簡単な作業とは言えない部分があるかもしれない)

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仕事をする側として、バイクに対する経験も知識も各々違うお客さんを目の前にした場合、(バイクに不具合が出た際は特に)『どう話せば現状を正確に理解してもらえるか』は非常に重要なことだと言える。

 『ここ*2にいる限り、お前はお客さんからすればプロだぞ』

勤め始めて何日めかのある日、社長からそう言われた。わかってはいるつもりだったが、『そうだよな』と改めて思った。*3

 

 

 

*1:爪水虫などは内服薬を医師に処方してもらう必要があります。

*2:自分の勤務する店は認証工場の許可を受けています。

*3:店で行われる全ての作業後の点検は必ず有資格者である社長が行っています。