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紅旗征戎吾ガ事ニ非ズ

最近は、まあまあ忙しいです。

公道を走るのに向かない人間

バイクに乗るのに向いてないヒトは、ほとんどいないとおもう。ただ、こと公道に限って言えば、向き不向きがあると言わざるを得ない。

 

昔の知り合いに、初回の継続車検まで同じクルマを維持できず、ほぼ毎年のように事故を起こしていたやつがいた。7年足らずの付き合いの間ずっとだ。いずれの場合も、プライベートな時間に起こしたもので、幸いにも重大な人身事故に至っていなかった。一度、外回りの仕事中に偶然にもそいつのクルマがレッカーされていくのを見たことがあったが、一目見て廃車だとわかるぐらい前半分がぐしゃぐしゃに壊れていた。案の定というべきか、そいつは(翌日に五体満足な姿で出社できたのが不思議なぐらいの)大きな事故を起こしていた。初めて話を聞く人間からすれば『運転が下手なんだろう』と思うかもしれないが、クルマの運転もバイクの操縦も、そいつは上手い部類に入るほうだった。

 

どこの峠でも、走り屋のメッカになっている場所では、ローカルルールというものがある。遅い人間が危ない目に遭わないように、いつの間にか出来上がったものだと思う。それはいい。問題なのは、そこが公道であり、訪れるドライバーやライダーは走り屋ばかりではないということだ。神戸の某所には、土地柄のせいもあって、一般の観光客もやってくる。ローカルルールが設定されていることなど知りもしない。

 

『あの野郎、そのまま真正面から突っ込んできやがったんだよ!」

 

バイクは、一度決めた走行ラインを途中で修正することができにくい乗り物だ。クルマはステアリングで向きを変えるが、バイクは曲がる方向へ車体を傾けなければならない。旋回しているバイクの傾きが強いほど、そのあとの車体を起こす時間は長くなる。もし旋回中に、前方からクルマが突っ込んでくれば……万事休すだ。逆に言えば、バイクの車体が起きている(=直立している)時間が多いほど、走行ラインの修正もやりやすいことになる。結果、正面衝突などの事故も回避できる確率は高まる。公道を走るバイクのリアタイヤの状態(=端まで使い切っているか否か)が、運転者の技量を推し量る材料には必ずしも繋がらない。

 

『このビ◯◯◯ム君を完全に亡き者にする*1のが今の目標で〜す』

 

確かに、リアタイヤの端っこまで使い切るのは格好がいい。端まで使おうとすると、トラクションをかけてリアタイヤ自体を路面に強く押しつけることになる。ゆっくり旋回してもタイヤの端っこは削れていってくれないから、ある程度の速度を出さなければならない。ここ20年ぐらいでスポーツモデルのハイパワー化が進んで、それに合わせてタイヤもどんどんワイド化した。太いタイヤは曲げにくいから、端まで使い切ろうとすれば……無謀とも言える速度で走っているように一般人には映るだろう。

 

『「ええい、いってしまえ!」ってときがあるだろう?』

 

漫画「キリン」の中のエピソードで、新車を買うたびに『今度は絶対に見せにくる』と喫茶店「ランブル」のマスター(モヒ)に約束しては、毎回のようにバイクの購入から日を置かずに廃車にしてしまう、という男が登場する回がある。あの、事故を起こす瞬間のバイク乗りの心理状態は良く描かれていると思う。しかし、実際にあんな人物が身近にいたら、一緒には走りたくはないし、少なくとも公道では遭遇したくない。

ブラインドコーナーに『ええい、いってしまえ!』と突っ込んでいくことは無謀と言うほかない。スピードを落としてセンターに寄せ、なるべく向こうが見渡せる状態でクリアするのが普通だろう。*2 見通しの悪い場所で道なりに車体を寝かせた状態で走っていては、とっさの回避行動も取れない。公道では前から誰かが走ってくる。もし自分のバイクの性能を限界まで堪能したいと思うのなら、サーキットへ行けばいいだけの話だ。

 

 最後に。

 

ここまで読んでわかると思うが、この話は何もバイク乗りだけに向けた話でもない。クルマを運転するドライバーも、前述のバイクの特性ぐらいは覚えていてほしい。それと、最近のドライバーは行き違いの際に相手任せの運転をする人間がすごく多い。狭い道での運転が怖いなら遠回りでも避ける。それが嫌なら、自分のクルマの車幅ぐらいは購入当初に把握しておくことだ。これは最低限のことだと思う。ステイタス(=オラオラ運転)で道を譲ってくれない輩も世の中には少なからず存在するからだ。

 

 

*1:某タイヤメーカーを愛用するバイク乗りの間では、リアタイヤ端に浮き出たマスコットキャラクターを走行によって削り取ることを目標とする人間がいる。

*2:運転者の進行方向左側の見通しが効かない場合。逆に右側の見通しが悪い場合は車体を道路の左側に寄せる。