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母の生存確認に訪ねてきた女性

 

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母の腰の状態は、あれからずいぶんと良くなった。ここ数日の買い物や洗濯は自分が担当していたが、昨日あたりから洗濯物の取り込みをやってくれるようになった。

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今朝も、自分が引き続き洗濯物を干した。父の汚れ物もあったので、母屋から3往復ぐらいしたんじゃないかな。寒いし、雪は残ってるし、また母に転んでもらっては困る。年寄りは、転んでそのまま寝たきりになるケースがある。

 

ついさっきだが、あまり見かけないというか、おそらく自分とは初対面だろうと思われる中年女性が訪ねてきた。うちは昔の家の作りで、正面の玄関の横に小さい入り口がある。知り合いや、用事のある業者などは小さい入り口から出入りする。しかし、さっきはインターホンが鳴って確認すると、正面の玄関のモニターが点いた。

(誰だろうな?モニターに映ってねえぞ)

小さい入り口を開けて『どちら様ですか?』と言うと、ヤッケを着た女性が現れた。

『お母さんの姿を最近見ないもので……お元気かなと』

『どちら様ですか?』

『ここの前をよく通るんで……先日も花をいただいた者です』

確かに、畑でできたものを知り合いに持たせてやることはある。しかし、今は冬だし、うちは畑で花も栽培していない。

『はあ…そうですか。腰を悪くしているもので、起こしたくはないんですが』

自分は、ここで少しこの女性に対してカマをかけてみることにした。

『先日もねえ……似たようなことをおっしゃる方がいらっしゃって、何か母のことが近所で噂になってるんでしょうか?』

すると、女性は急に顔面蒼白になり、うろたえ始めた。(もちろん、自分が言ったことは口から出まかせの大嘘だ)

『いえ、私は初めて来たんです。そういうことは知らないです。すみません、失礼します!』

そういうと、女性は慌てて戸を閉め、逃げるように帰って行った。

 

女性が帰ったあと、念のために母に尋ねてみたが、

『え?花なんかあげたことないで(笑)うちは作ってへんし』

と首を傾げた。

 

母の安否などは、近所の人間に聞けばすぐわかることだが、おかしなことを吹聴する暇な人間がいるものだ。

 

 

 

大雪の日

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このあと、母屋から物干し場がある倉庫までを雪かきした。降り続く中の雪かきはなかなか進まず、倉庫の明かりを点けて日没後も続けるしかなかった。

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月曜の朝。前日にクルマは無理なことがわかっていた。膝下までの長靴を履いて家を出た。除雪車が通ったらしく、道路はどうにか歩くことができたが、路肩や歩道は自分の膝上まで雪が積もっていた。俺の身長が178センチだから、その膝上っていうと…まあまあの積雪量だった。

街の中心に出ると、ノーマルのタイヤでスタックして動けなくなってるやつ(アホ)や、歩行者を回避できない後輪駆動の外車(なんでこんな日にわざわざFRで出てくるかね?)とか、其処此処で面倒臭いことになっていた。どこかの会社の前では、ネクタイ締めたおっさんが、プラスティックのショベル持ってはしゃいでるとか…まあ、そんな感じだったわ。

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予定がふいになってしまい、家族分の食料やらを買い込んで、徒歩で帰宅。あとは、休む間も無く、玄関から表の道路までの雪かきだ。

『あいつも一人前やな』

雪で工場が休みになった(?)近所のオッサンがクルマで通りしなに、雪かきをする隣のオッサンに話しかけていた。オッサン二人が言う『あいつ』とは俺のことだ。俺は独り者で、所帯持ちのこのオッサンらとは普段の付き合いもない。田舎ではそんなものだよ。地域の集会なんかに参加すると、世間でいう適齢期をとうに過ぎた独身者は、あれやこれやと衆目の的になるだけだしな。

一人前の尺度って、そもそもなんだ?たった二メートル四方もない玄関周りの雪かきさえ、何時間やっても終わらないクソジジイに言われる筋合いもねえし。片方の男は、日役で草刈機もまともに使えねえときてる(ものの1分も振り回すことができねえなんて、ウルトラマン以下だぜ)。だらだらやってるのは、自分の嫁はんに「頑張った感」をアピールしたいんだろ?男ってのは、褒めてもらわなきゃダメな生き物らしい。

そのうちに、俺が道路近くまでクルマの通る道を開ける頃*1には、隣のオッサンも(軽口を叩いてる場合じゃねえとようやく気がついたらしく)黙々と雪かきに専念し始めた。(1間ほどの幅の玄関一つに朝から何時間かかってんだ?)

『よう降りましたなあ』

話し相手のなくなったクルマのオッサンが、門のあたりの雪を溝へ搔き落としてる俺に挨拶してきた。普段はこっちが頭を下げても、じっと顔見るだけで無視して通るようなやつが。『そうですなあ』なんて年相応の挨拶する気なんてさらさらねえし。(雪が降ったからって、子供みたいに高揚してんじゃねえよ)

『あー』

って、カラスが鳴くごとく気のない一言返して、また雪かきを始めたさ。下手に愛想よくして居座られても困るしな。よくいるんだよ。稲刈りの休憩中に挨拶してきたと思うと、俺とお袋にずっと話しかけてきて、全然腰を上げねえオバハンとか。こっちは少しでも体を休めたいし、次の段取りの相談とかもあるんだからな。本当に迷惑なんだよ。その点、同じ百姓の家のヒトは挨拶だけして通り過ぎてく。こっちは仕事をしてるんだからな。

 

さすがに、週に3回も同じ場所の雪かきは堪えたわ。こういうのが、雪国だと普通のことなんだとおもうと、俺はとても暮らせねえな。

 

 

 

*1:母屋から道路までは約15メートルぐらいの距離。軽トラが通れる幅で掘り進めて40分ぐらいかかった。

そろそろ、この話も終わりにしたいんだが…

youtu.be

 

例のバイク屋が、不具合発覚後に俺に寄越したメールの最初の書き出しが『おはよーゴザイマス……ブログ読みました』だったからな。これ一応謝罪メールのつもりだったらしいわ。ふざけてるだろ?別に普段のやりとりだったら構わないが、どうもこっちが本気で怒ってるってことを理解してなかったみたいだな。その後に、誰かに『まずいよ』と言われたらしく、いつの間にか謝罪メールは削除されてたわ。*1

 

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手土産っていうか差し入れは、結構な回数を持って行ったと思うよ。みんな俺のポケットマネーなのはもちろんだ。うちの母親もそんなことは、いちいち感知していない。米や野菜は母親からの心づけだ。今も親父が組合員であることには違いないが、役所の関係の書類には耕作従事者として俺の名前が記載してある。*2 それ以前に、20年ぐらい前から田んぼを預かって家の米自体は俺が全部作っている。あることないことを店主の耳に入れたやつの中には、うちの地元からステッカーなどを店へ納入する業者もいたようだ。その店のある場所も、俺は当然把握している。

 

細かいことを言えば、アッパーカウルのボルトはスクリーンを含めて全て店が紛失(?)していた。カウルのトップのフランジ付きの六角ボルト*3は中古のもので留められていて、今もそのままだ。スクリーンを留めるネジは、オオノスピード*4のものを付けていたが、納車時には純正に変えられていた。他は、なぜかフレームにエンジンを留めてあるボルトと同じ種類のもの(=明らかに外装を留めるボルトではないもの)が嵌っていた。

修理前に俺が組んでいたフロントのメッシュホースは『フォークの外側に取り回してあるのは危ない』ということで店が組み直した。『あくまで仮組みだ』ということ(=アダプターの一部に中古の部品が入っていても気にしなかった)だったが、約束は反故にされて新規にやり直すこともなく、そのまま納車されて現在に至っている。一応、店主に尋ねはしたよ。だけど、『何か不具合があるか』という一言で一蹴されてしまった。

張り替えたシートのステープルも、店の預かりの間に赤く錆びていた。どういう管理の仕方をしていたかはわからない。屋内に保管している限りは、あんなに錆びることはないと思うがな。

納車前に試乗はしたが、あらかじめ暖気してあったからな。色々気がつかない部分もあったさ。さすがにクラッチの切れの悪さは指摘したが、結局は直っていなかった。

支払った金が俺のバイクに全て還元されてたのか?という疑いも当然あるよ。なけりゃ、おかしいだろ?

『そんな店を選んだお前が悪い』

よくそういうことを言うやつがいるが、ここの店で別のバイクを今回とほぼ同じ内容で修理に出した際は、きちんとした仕事がされていた。だから、今回も仕事を頼んだ。

 

バイクには金がかかる。数年のスパンで新車に乗り換えて行ったほうがトラブルも少ない。だけど、気に入った自分のバイクを手放さずに何年も乗り続けるやつもいる。面倒くさい批判だけはやめてくれ。

 

自分のカタナは750の2型で、別のトラブルで有名になったアニバーサリーの1100とは全くの無関係だ。(これも何度も話したよな?)

 

 

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*1:店主とのメールのやりとりは、全てバックアップを取っている。説明するまでもないが、店主がメールを削除したのは、謝罪した証拠を残さないことが目的と思われる。

*2:ここに書いたこともあると

思うが、親父は数年前から介護が必要になり、今は完全介助の状態だ。

*3:純正は十字のビス。

*4:今回の件とは一切無関係。

アルミ製サイレンサーの鑞(ろう)付けによる補修

コチラで書いたように、サイレンサーの分解が終わったので、傷の補修をする。

 

f:id:ghost_pain:20161205204016p:plainサイレンサーの裏側に出来た傷というのはこの赤い丸で囲んだ部分。リアのアクスルシャフトの先で擦って出来た傷だ。(アクスルは、左右をコチラで入れ替えたので、今後同じ場所に傷が入ることはない)

『何も、分解しなくてもサイレンサーの傷の補修なんてできるだろ?』

という疑問は当然だと思う。だいたい、この手の傷を修理する場合は、ホムセンか四輪の用品店でアルミパテを買ってやっつけることになることが多い。経験した人間なら分かるとおもうが、アルミパテで仕上げるとパテと地のアルミとの境目がくっきりと分かるし、『ここですよ。パテで補修したところは』という感じの残念な仕上がりになる。たとえ磨いたとしても、パテとアルミそのものでは質感が全く違うので、ホイールなどの補修後は塗装で仕上げることが多い。

いくら裏側の見えにくい部分とはいえ、できたらそういう不細工なことは避けたい。サイレンサーの材質がアルミということもあり、今回は鑞(ろう)付けで傷を補修することにした。鑞付けで補修するとなると、補修箇所を高温で加熱することになる。分解せずに加熱した場合は、中のグラスウールを焼くことになるし、どちらにしてもサイレンサーを分解することになるというわけだ。普通は、サイレンサーの分解なんてのは、グラスウールを交換するときぐらいしかやらない。

鑞付けを簡単に説明すると、半田付けの親戚というとわかりやすいかとおもう。(例えば穴の空いた燃料タンクなどの)母材を半田ごての代わりにバーナーなどで加熱して、そこへ半田の代わりに「硬ろう」を補修したい穴や傷に流し込む、という具合。通常、アルミの鑞付けはフラックスを使う。しかし、フラックスを使う鑞付けは、ある程度技術的に習熟しないと難しい。それで、今回はフラックスを必要としない鑞付け棒(=アルミ硬ろう)を使うことにした。

f:id:ghost_pain:20170114122927j:plainそれが、この鑞付け棒。アマゾンで検索すると、フラックスを使わないタイプのアルミ硬ろうは、1社からしか出てないから、すぐ見つかるとおもう。あとは加熱に必要な道具のバーナーを揃えるだけだ。

f:id:ghost_pain:20170114124716j:plain今回使用したバーナーはカセット式のもので、どこのホムセンでも入手可能なものだ。

f:id:ghost_pain:20170114132158j:plainまずは、下準備として傷の部分及び周囲をワイヤーブラシで荒らす。そして、前述した手順で鑞付けを行う。フラックスは使わないので、取説に書いてある温度に補修箇所を十分に加熱できたら、そこへ鑞付け棒を接触させて溶かし、流し込む。母材(=サイレンサー)を十分に加熱することが作業が上手くいくコツだ。

 

実際の鑞付け作業は、また動画でアップするとして……いきなりだが、

 

f:id:ghost_pain:20170114132704j:plainサイレンサーの傷を鑞付けで補修するとこんな感じになる。画像の補修した部分は、グラインダーで均したあとに軽くペーパがけしてある。鑞付けのあとの肉盛りされた部分は、磨いて薄くしすぎると剥がれやすくなるから、この程度の処理にとどめておいた。そこはやはり、硬ろうを流し込むだけの鑞付けよりも(部材同士を溶かして接合する)溶接のほうが強度的には上だから、用心するに越したことはない。

f:id:ghost_pain:20170114134124j:plain同じ補修箇所を、さらにメタコンで磨き込んだ。蛍光灯の明かりが、わずかに歪んでいる部分が鑞付けした箇所だ。

f:id:ghost_pain:20170114134338j:plainもう少し近づいて見る。アルミパテより鑞付けのほうが、地のアルミとの見た目の馴染みが良いことは言うまでもない。それに、

f:id:ghost_pain:20170114134607j:plain耐久性については、取り付けてしばらく時間を置かないとわからないが、鑞付け後はハンマーで叩いても簡単に剥離する様子もなくガッチリくっついていた。

f:id:ghost_pain:20170114140239j:plain他にもマフラーエンドの縁の傷や、

f:id:ghost_pain:20170114161942j:plainリベットを揉む際に、うっかりドリルが滑ってずれた穴*1の修整も、鑞付けすると簡単に修整できた。

f:id:ghost_pain:20170114162047j:plain(そんなに強度が必要でない部分なら)手軽に補修ができるので、アルミの鑞付けの使い途は結構あるとおもう。

f:id:ghost_pain:20170114164510j:plain作業場所にもよるだろうが、鑞付けを行う場合は、画像のような耐熱の不織布(=溶接用) を下に敷くなどして養生したほうがいい。ちなみにバーナーで母材のアルミを加熱する場合の温度は、取説によると390℃(=アルミ硬ろうの融点)と書いてあった。また、鑞付け後は自然冷却するよう書いてあり、それに従った。それから、アルミは他の金属に比べて熱伝導率が高いので、鑞付け後に自然冷却する際も置く場所には十分気をつけたい。鑞付けした直後のものが、例えばドライバーの樹脂製の柄などに触れると簡単に熱で柄が溶けてしまう。

 

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*1:リベットをドリルで揉む際に、後半へ行くほど穴とマフラーエンドの位置がずれてくることがある。揉む際にリベットが完全に下へ落ちないように気をつけてはいたが、最後の穴の一つがズレてしまった。

仕事

この季節に、自分の部屋で石油ストーブが赤く燃えてるのを眺めてると、昔に同僚がボヤいていたことを思い出すことがある。

『◯◯(俺の名前)さん。このストーブの芯の交換てさ、手間がかかる割には、ほとんど部品代しかもらってないんだよ?』

『ああ、そうやったな』

どんな電化製品だろうが、量販からメーカーに修理を頼んだ場合、中を開けて点検するだけの手間賃でも5,000円以下になることはなかった。(今はもっと取られるかもしれない)石油ストーブの芯の交換などは基本的にメーカーは受け付けていない。しかし、お客が頼んでくれば、無下に断るわけにも行かず、店側がやるしかしょうがない。冬場になると、ストーブの芯の交換を頼んで来る客は意外と多かった。

そこで、店が値段を設定するわけだが、芯の値段と手間賃を普通に考えたら、どうしても高額になってしまう。それで、同僚が店長に相談した結果、芯の部品代を入れて一律3,000円もらうということに決まった。これは、どう考えても赤(字)が出る話なんだが、修理を頼むお客側の心理を考慮したら、しょうがないというわけだ。

ストーブの芯の交換とは一口で言っても、大抵は交換だけで済むものでもない。(経年劣化は別にして)だいたい、シーズン終わりに収納する際の客の手入れがズボラな場合が多いからだ。だから、ストーブをほとんど全バラの状態にして、灯油が入るタンクを始め、ススやらゴミやら内部を全部掃除することになる。掃除が終わったら、今度は中を徹底的に乾かす。それから、新しい芯を巻きつけて…やっと交換作業が終わる。頼んだ客のほうは、こんなに手間がかかる作業だとは、よもや知らないだろう。

『ストーブを修理に出したから、代わりにファンヒーター買うわ』

いやいや、ストーブのメンテもろくにできないやつがファンヒーターなんか買ってどうする?インジェクションの部分に小さなゴミが詰まれば、燃料が気化しなくなる。もうそれだけで、部品交換ということになり、高額な修理代が請求される。ストーブよりもファンヒーターのほうが構造が複雑な分、メンテナンスには神経を使う必要がある。買ってもらう限りは、こちらも季節終わりのメンテナンスについては説明して売るんだが、こういうタイプの客は(特に)ヒトの話など聞いてない。大抵は、シーズン初めに店にやってきて『去年買ったばかりなのに、こんなすぐ壊れるもんなんか?』と文句を言う。

家電やクルマやバイクの部品でもそうだが、店側がお客に前払いを要求するのは仕方ない。(オイルフィルターなどの消耗品なら互換性もあるだろうが)中には注文して取りに来ない客もいるから、先に金をもらわないと割に合わない。

『お前、少しは仕事せえよ。遊んどらんと』

『そうかい?(笑)』

(小汚ねえ作業着で店に訪ねて来るんじゃねえよ、おっさん。電池の一つでも買って、ちっとは売り上げに貢献しろ。このボケが)

店に立つと、昔のバイト先の知り合いなどが、こんな感じで話しかけてくることがあった。小売りなどの仕事の内容を知らない人間からすれば、そんなものかもしれない。ブラブラして店内を歩いていなければ、お客の動きが見えない。売り出しの値札は、本部から印刷でほとんど届くものの、手書きに頼る部分が結構多かった。そうかと言って、俯いてポップなどを書くのに集中していると、お客が入って来たことすら気づかないことがある。だから、耳や目端は常に店内の様子に向けている必要がある。(自分が客の立場になってみるとわかるが、忙しそうにしてる店員には声をかけにくいだろう?)

 量販は実店舗だから、当然在庫の管理もある。外回りの配送や設置をやってる時でも、電池なんかの小物の品出しはやっていた。あれを切らすと、結構売上げに響く。いつでもギッチリ豊富に並んでいると、(印象が良いから)客が買いやすい。外回りの最初の頃は簡単な工事もこなしていた。外回りは配送がメインなので、後に店が地元の工事業者何人かを下請けとして契約することになった。その下請けの手配自体を任せられてた時は…使いにくい職人もいて、結構苦労した。

(夏にエアコン工事をやって暑いのはわかるが、お客の家の庭で上半身裸になって水浴びするジジイとかな。仕事はできるから、店も切れねえんだよ。注意すると『命令するな!』って怒るんだよ。俺も言いたかねえよ、そのジジイからすりゃ孫ぐらいの年だったからな)

 

まあ…今書いたようなことは、業種に限らず、仕事してりゃ大なり小なり皆んな抱えてる。

 

どんな仕事にでも不満はあるだろうが、人の生き死にを預かってるからって、何かにつけて自分の大変さをアピールされても辟易する。まるで、世界が成立してるのは自分のおかげみたいな。立派な仕事だし、プライドを持ってやってるのも理解してるつもりだ。しかし、事あるごとに『あんたはわかってない!』って言われるのにも限度がある。聞く側が受け止め切れないってことだ。『そんなに辛きゃやめればいいんじゃね?』って言おうものなら、火に油で半狂乱みたいになる。異口同音に『私がいないと困る人たちがいる』って言うんだが、これも職種に限らず、替えの人間なんていくらでもいる。クリエイティブな職業についていてさえ、流行り廃りが世の習いだ。俺は切られた側の人間だから、どこか冷めてるところがあるのかもしれないが、しがみついて自分を消耗してもろくなことはないと経験上思うんだよ。

『わかってない』と噛み付かれたついでにいうが、現場にいるからといって病人の心の内まではわからんよ。病気そのものを治すのはもちろんだが、病気になることによって本人や家族の仕事や生活は一変する。それが病人が10人いれば10人とも状況が違う。俺が倒れたときは、自分が死ぬのが怖いというよりも残していく家族の姿を想像して涙した。(生検の結果を待つ間なんて自分が死ぬ覚悟を決める猶予期間みたいなものだものな)

俺が一番心配するのは、仕事のストレスから本来自分が守るべき人間(=患者)を傷つけてしまわないかということだ。もし少しでも心当たりがあるというなら、大ごとになる前に仕事から身を引くべきだろうな。